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TARACK 06 LINER NOTES

第6話のサブタイトル「グッバイ・ブルー・スカイ」は、イギリスのロックバンド、ピンク・フロイドが1979年に発表したアルバム『ザ・ウォール』の収録曲から採られたもの。ゲストキャラクターであるロズの名前も、ピンク・フロイドのメンバー、ロジャー・ウォーターズをもとにしていたりと、このエピソードには、全編にわたってピンク・フロイド関連の楽曲やビジュアルから採られた多彩なイメージがたっぷりと盛り込まれている。

 まずはエピソードの冒頭、ノームの国へ向かうエコヲたちが通り抜ける草原。この牧歌的な風景は、アルバム『原子心母(原題:Atom Heart Mother)』から採られたイメージだろう。このアルバムは、ピンク・フロイドを一躍有名にした名作だが、のんびりと草を食む牛の姿を映したジャケットも印象的。またアルバム『狂気(原題:The Dark Side of the Moon)』の収録曲「Brain Damage」は「The lunatic is on the grass(狂人は草原にいる)」という歌詞から始まるが、ここに登場する草原のイメージも、投影されているように思える。

 また『狂気』のジャケットには、光のプリズムがあしらわれているが、これはそのまま、ノームの国を取り囲む偽装城壁(鏡の壁)のアイデアに繋がっている。ノームの国では随所に、虹のような光が差し込んでいるが、これも『狂気』から来たモチーフだろう。アルバムジャケットでいえば、握手するミミナシとノームの民のイメージは、アルバム『炎~あなたがここにいてほしい(原題:Wish You Were Here)』のジャケットを連想させる。

 ロズは、国全体を取り囲む壁を自分のイクイップメント、ザ・ウォールとして操作しているが、この名称もピンク・フロイドの同名アルバム(原題:The Wall)から。このアルバム発表直後のワールドツアーでは、ステージ上に巨大な壁を築いていくというパフォーマンスが行われ、まるで演者たち自身の内面世界を物語化したようなアルバムの内容とともに、ロックファンに大きな衝撃を与えた。

 ノームの民が空に飛ばしていたピンクの豚の風船も、ピンク・フロイドのアルバム『アニマルズ』のジャケットイメージから採られたもの。こちらは、社会風刺をふんだんに盛り込んだ攻撃的な内容が話題を呼んだ。

 このエピソードでメインライターを務めたじんにとって、ピンク・フロイドを初めとするプログレッシブ・ロックは、自分の音楽体験の基礎を形作ったジャンルだという。アルバム全体でひとつのストーリーを語る、コンセプトアルバムという形式、ブルースやサイケデリック・ロックの成果を踏まえつつ、ジャズやクラシックといった他のジャンルを貪欲に取り込もうとする先進的な姿勢。第6話は、そんなプログレッシブ・ロックに深い愛情を抱く、じんらしいエピソードになっているように思う。

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