LISTENERS

SPECIAL

オフィシャルインタビュー Part 2 佐藤大

Q1
――まずは、参加の経緯からお聞かせください。先行して、じんさんとプロデューサーの橋本(太知)さんが進めていた企画に、佐藤さんが途中参加されたそうですね。

佐藤 そうですね。今の『LISTENERS』とは違う企画でしたけど、「こういうことをやりたい」っていう企画書を、最初に見せてもらったんです。そこには「ジョン・レノンの魂を召喚するロボットの話がやりたい」って書かれてたんですけど……。

――それはまた、尖った企画ですね(笑)。それを見たときの印象というのは?

佐藤 「えっ、ロボット?」と思いました。逆に言えば、そのときからロボットと音楽モノっていうコンセプトはすでにあったんですよね。ただ、じんさん自身、脚本を書く人なわけで、「どうして僕が必要なんだろう?」っていうのはありました。なので、「まずは一度、会って話しましょうか」ということになりました。

じんさんのことは、この仕事で会う前にすでに『カゲロウデイズ』を読ませてもらって、面白いと思っていたし、彼が書いている詞も面白かったんですよ。だからどうやって作ってるんだろうということが気になっていました。なので、脚本家として具体的に作品をどうこうするというよりは、まずはじんさんがどんな人なのか、パーソナリティをインタビュアーとして聞く。そんな感じで始まったんです。

――なるほど。

佐藤 そこで興味が持てなかったら、たぶんお互いにそれまでだったと思うんですけど、でも実際に会って話してみたら、すごく面白くて。じんさんと僕はひと回り以上世代が違うんですけど、彼もマンチェ(※1980年代末から90年代初頭にかけて、イギリスの都市・マンチェスターを中心に起きたムーブメント。代表的なバンドにストーン・ローゼズ、ハッピー・マンデイズなど)が好きで、機材のことも含めて、僕よりも音楽オタクだったんです。しかもじんさんはアメリカの音楽よりもイギリスの音楽寄りで、そこもチューニングが合わせやすくて……。とにかく最初の頃は音楽の話をたくさんしてた記憶がありますね。

――世代が違っていても、音楽の話で一緒に盛り上がれた。

佐藤 しかも僕の場合は、なんだかんだといって勉強目的になっちゃうんですけど、じんさんはどんなジャンルの曲でも、フラットに聴いている。シューゲイザーにしてもパンクロックにして、ギタープレイヤーとして、自分で演奏しようと思って聴いてるんですよ。そこが自分にとっては新鮮で。しかもオタクはオタクなんだけど、その一方で知らないことは知らないと素直に言える人だったんです。そういう意味でも、すごく話しやすくて。



Q2

――先ほど、音楽をモチーフにしたロボットアニメという話が出ましたが、企画が今の形になったきっかけは、どのあたりにあったんでしょうか?

佐藤 たぶん、ロックのいろいろなジャンルを国に見立てるっていうアイデアが、突破口になったのかなと思います。さっきの話にもつながるんですけど、僕は、ビートルズがあって、そのあとパンクムーブメントが起きて、ニューウェーブがあって……みたいに、時間軸を追っかけながら聴いてるわけです。でもじんさんは歴史とは関係なく、フラットに聴いている印象があって、ジャンルの境を飛び越えて、フラットにいろいろな国=ジャンルを行き来してるような、そういうイメージが思い浮かんだんです。

そこから、いろいろなジャンルだったり、モチーフになっているアーティストの国を、自由に旅する話は面白いかもしれないな、と思うようになりました。しかもミュージシャンはツアーで様々な国を回っているわけで、ロードムービーとも相性がいいんじゃないか。で、旅をするなら、女の子と旅をする方がいいだろうし、加えて、その女の子がギターだったら面白いんじゃないだろうか、と次々にアイデアが繋がっていきました。

――そこからだんだんと、今の形になっていったわけですね。

佐藤 あとロボットアニメをやるんだったら、やっぱり何か呼称が――モビルスーツとか、アーマードトルーパーみたいな感じで(笑)、必要だなって思ってたんです。そのときに「ロボットをイクイップメントと呼ぶのはどうだろう」という話になって。「イクイップメント」は「機材」って意味ですけど、音楽をやってる人たちからすると「ああ、なるほど」と思ってもらえるんじゃないかな、と。そんなダジャレというか言葉遊びもあって、そこで「行けるかも」みたいな感触があったんです。



Q3

――じんさんと佐藤さん、橋本プロデューサーの3人が最初の企画立ち上げメンバーだと思うんですが、それぞれ役割分担はあったんでしょうか?

佐藤 橋本さんは「これを絶対に作品にしよう」という、全体を牽引する立場でしたね。でも僕とじんさんは「話してるのが楽しいから、これが作品にならなくてもいいや」くらいに思ってるわけです(笑)。実際、2回ほど企画が途中で立ち消えになりそうな瞬間もあったんですけど、そこで橋本さんが「絶対にモノにするぞ」と思っていたから、ここまで漕ぎつけられました。

――まさにプロデューサーだったわけですね。

佐藤 そして、じんさんは「こういうことがやりたい」って、どんどんネタを出すほうで、それをどうやってまとめればお話になるかを考えるのが僕の役割でした。自分のこれまでの経験やスキルから「ここはこうした方がいいよね」みたいな感じで、まとめていく。それこそ、どんなアーティストをネタにしたら面白くなるか、みんなでネタを出していったわけですけど、それをどの順番で見せれば、12本のシリーズに収まるのか、その地図を書いたっていう感じですね。



Q4

――一緒にお仕事をされた佐藤さんから見て、じんさんはどんなクリエイターですか?

佐藤 最初に会うまでは、器用で何でもできる人だと思ってたんです。それこそ作詞作曲をやって、自分で演奏もするし、なおかつ小説も書いて、しかもその小説が余技的なものじゃなくて、ちゃんと世の中に通用する。ほかにマンガ原作とか脚本もやってるし、すごく器用な人なんだろうな、と。でも、実際に会ってみたら、まったく逆で。

――そうだったんですね(笑)。

佐藤 めちゃくちゃ不器用なんですよ。すごく迷うし、思ってることを心の中に溜め込んじゃうし、周りにもすごく気を遣う(笑)。「俺が書いたんだから、こうだ!」みたいな、新進気鋭のマルチクリエイター的なイメージを思い描いてたら、むしろ「この人、他人の話を聞きすぎじゃないか?」っていう。

それこそ、脚本を書いているときにも「もっと自分の好きなことを言っていこうよ」って、話をしてたくらいで……。言い方を変えると、もっと俯瞰で見てる人なのかと思ったら、結構、周りが見えてないときがあるんですよ。集中力はあるんだけど、すごく視野が狭くなる瞬間がある。でも、そこがじんさんらしい「熱さ」に繋がってるんだなと思うし、そこはすごくチャーミングだな、と。……まあ、きっと彼が器用な人だったら、途中で僕のことがいらなくなってるんじゃないかな、とも思いますしね(笑)。



Q5

――少し具体的な内容についても、聞かせてください。シリーズ構成として苦労したところは? 各エピソードごとの脚本は、どのように書かれたんでしょうか?

佐藤 今回僕やじんさん、宮(昌太朗)さんが各話の脚本を担当しているんですが、それぞれが担当する話数を決めたあと、まずはプロットから箱書き(※場面ごとに登場人物やシチュエーション、出来事などを簡単にまとめたもの)にして、さらにそれを脚本にまとめていきました。ただ、そこも『LISTENERS』は少し変わっていて、僕が書いた脚本のセリフをじんさんに書き直してもらったり、上がってきたシナリオに合わせてシリーズ構成を修正したりしています。

僕としては、やっぱりじんさんにセリフを作ってほしいと思っていたんですよ。第1話の脚本が良い例なんですけど、最初に僕の方でプロットを組んだ後、じんさんが「書きたい」と立候補してくれたんです。なので、セリフを入れる手前の段階で彼に渡して、上がってきた第1稿に対して、僕が修正を――小説っぽい地の文のところをセリフにしたり、逆に説明っぽいセリフをト書きに書き換えたり。一緒に脚本をやってくれた宮さんも含めて、誰がどの話数を担当したのか、わからないくらい、みんなで一緒に作っていきました。

――脚本としては、かなり珍しい書き方をしているわけですね。

佐藤 そうですね。普通はシリーズ全体の構成(流れ)が一度できあがったら、そこから外れないようにするものなんです。でも今回はそうじゃくて、各話の担当者がある程度、脚本に落とし込んだものを見て、そこから構成を変える、みたいな作り方をしています。そこはやっぱり苦労しましたね。

――なるほど。

佐藤 やっぱり、書いてみないとわからないことってたくさんあって、『LISTENERS』の中で言えば、特にジミ(・ストーンフリー)ですね。物語上必要なキャラクターだというのはわかってるんだけど、いざ動かしてみようと思うと、なかなか想定の通りには動かない。だったら、自由に書いてみて、そこで出てきたものを構成にフィードバックしよう、という試みもしました。それはちょっと、他の作品ではない体験だったかもしれません。



Q6

――今の話と関連するかもしれないんですが、本作で挑戦したことというと?

佐藤 『LISTENERS』は構成上、普通はありえないことがいくつも入っている作品なんですよ(笑)。詳しくは言えないんですけど、例えば第2話でいきなり、わけのわからないエピソードが入ってきたりする。あるいは後半の方でも、「さあ、ここから」っていうときに、一歩も動かない話が入ったり。そういう構成って、僕だけだったら絶対にやってないんですよ。じんさんが「ここはこうした方がいいんですよ」って言って、それで「なるほど、それは面白いね」と。それこそ『LISTENERS』は、劇中にいろんなガジェットが登場するんですけど、それをどうやれば王道のボーイ・ミーツ・ガールストーリーに上手くハメられるのか。そこはすごく挑戦だった気がします。



Q7

――随所にロックのモチーフが散りばめられている本作ですが、佐藤さんが個人的に思い入れの強いジャンルというと、どれになりますか?

佐藤 やっぱりシューゲイザーですね。自分が好きなジャンルだというのはもちろんなんですけど、劇中、いろいろなロックのジャンルが出てくる中にノイズとシューゲイザーが入っているのを見ると、冷静に考えて「もっと他に入れておくべきジャンルがあるだろう」という気はする(笑)。

ただ、シューゲイザーの2人(ケヴィン、ビリン)は男女コンビということもあって、上手くエコヲとミュウのコンビと対になっているところがあるんです。しかも轟音と美しいメロディっていう、相反するものが同居してる感覚――ずっと俯いてるのに、誰よりも遠くに音を届けようとしているシューゲイザーの感覚を、うまく物語に落とし込めたのかなと思います。

――単純に好きなものを入れただけではなく、ストーリー的にも上手くフィットできた感じがあるわけですね。

佐藤 あと個人的にイチ押しなのは、殿下ですね。これも「普通、そこは入れないだろう」っていうチョイスなんですけど、殿下の元ネタになったプリンスって、僕にとってはギターヒーローなんです。世の中的には、マルチプレイヤーでダンスもできて……みたいな見え方をしてるアーティストで、すごく器用な人と思われがちなんですけど、じつはその一方ですごくナイーブな一面を持っていたり、インタビューではすごく達観したことを言ってるわりに、めちゃくちゃ周りが見えてなさそうだったりする。あの感じは、わりと僕の中ではじんさんのパーソナリティと繋がっているところがあるんです。



Q8

――ネタバレにならない範囲で、個人的に「ぜひここを見てほしい」というシーン、キャラクターを教えてください。

佐藤 僕は、マーシャルというキャラクターが本当に好きで、最初は1回だけしか出てこないキャラのはずだったんです。でも、いつの間にか、どんどん出番が増えていって(笑)。それこそもし余裕があったら、脚本を書き直して第1話から、すべてのエピソードに登場させたいくらいなんですよね。あと、マーシャルとエコヲって、じつはひとりのキャラクターの出発点と終着点、みたいな感じもあって、たぶん普通に観てるぶんにはモブにしか見えないキャラクターではあるんですけど、ぜひ注目してほしいキャラクターのひとりです。



Q9

――では最後に、放送開始を楽しみに待っている方に向けて、メッセージをお願いします。

佐藤 いっぱいネタが入ってる作品ではあるんですけど、そういう部分はわからなくても全然大丈夫です。声優さんたちの素晴らしい演技だったり、ロボットのアクションシーンだったり、その後ろで流れてるミュージカルのようなサウンドトラックとか、いろいろな聴きどころ、見どころがある作品だと思います。そして、それをもし楽しんでもらえたなら、だいたいのキャラクターには元ネタが存在しているので、それを調べて「おお、似てる」とか「全然似てないじゃん」とか、あるいは「うわ、女体化してる」とか、そういうふうに楽しんでもらえたら、またいいかなと思っています(笑)。

とりあえずはエコヲとミュウ、ふたりの旅を見守りつつ、一緒に旅をしてくれるといいなと思います。

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