LISTENERS

SPECIAL

オフィシャルインタビュー Part 1 じん


Q1

――じんさんが原案を担当された『LISTENERS』ですが、まずは企画を立ち上げるにいたった経緯を伺えますか?

じん たぶん7年ほど前のことになるんですが、『カゲロウプロジェクト』とは別に、「新しい作品を作るのはどうだろう?」と考えていた時期があったんです。『LISTENERS』のプロデューサーの橋本(太知)さんを初め、色々な方に相談に乗っていただいたんですけども、そこから佐藤(大)さんと知り合うことができ、自分にとって「いい経験になるだろうな」と思えるインパクトの強い出会いがたくさんありました。途中で立ち消えになってしまう企画も多いと思うんですけど、そういう中で、『LISTENERS』は「絶対にやりたい」と思えた、そういう企画だったんです。

――もともとの企画のアイデアは、どういうものだったのでしょうか?

じん 元になっているアイデアはいろいろあって、特に最初の頃は、今とはまったく違うネタだったりもしたんですけど……。でも、音楽をベースにしたロボットアニメをやりたい、というのは自分の中にありました。

――『LISTENERS』のコンセプトは、最初の段階からあったわけですね。

じん とはいえ「自分は絶対にこれがやりたいんだ」という進め方ではなくて、他の方からもいろいろとアイデアが出てくる中で、「ここらへんが一番、いいんじゃないかな」というのものが徐々に積み重なっていきました。そうやって、『LISTENERS』の種となる部分ができていった感じがあります。

Q2

――そのとき、じんさんとしては『カゲロウプロジェクト』とは、まったく違うものをやろうと考えていたんでしょうか?

じん そうですね。「どうやって作るか」という部分では、『カゲロウプロジェクト』とはかなり違うところがあったと思います。もともと『カゲロウプロジェクト』は、僕がひとりで作っている部分が大きくて、もちろん、キャラクターデザインのしづさんだったり、動画を作ってくれる方だったり、たくさんのスタッフに参加してもらってはいるんですけど、作品のテーマだったり、自分が背負っているものだという意識が強かったんです。そもそも最初にインターネットで公開したときは、自分ひとりで始めたわけで、そういう性質の作品ではあるんですけど、作っていく中で自分の天井というか、ひとりでは破れない壁みたいなものを、感じ始めていたんです。

――なるほど。

じん その中で、チームでのモノづくりを経験したいな、という気持ちが大きくなってきていました。作品のテーマとなる部分から、チームで考えていく。そこが『カゲロウプロジェクト』と『LISTENERS』の、一番大きい違いかな、と思います。もちろん個人的には、『カゲロウプロジェクト』の二番煎じ的なものをやっても、面白くないだろうという考えがあったんですけど、それよりなにより、参加してくださってるみなさんのアイデアであったり、ご意見とか考え方が楽しくて、そのおかげでどんどん形になっていた作品かなと思ったりしますね。

Q3

――まさしく、ディスカッションの中から生まれてきた作品が『LISTENERS』なわけですね。例えば、制作中に出てきた中で、印象的だったアイデアはありますか?

じん パッと思いつくのは、脚本で参加してくれた宮(昌太朗)さんの発言ですかね。シナリオ会議で、ちょうど第1話の内容を詰めているときだったんですけど……。エコヲの人物像を考えていく中で、「最近の若い人たちは、エコヲみたいな考え方をするんだろうか」という話をされたんですね。「田舎でグダグダしている若い人は、本当に都会に出たいと思うのか。むしろ、居心地のいい場所から出たいと思わないんじゃないか」と。

――旅に出るための動機をどうするか、というところですね。

じん 僕自身、北海道出身だということもあって、「若い人は都会に憧れるのが当然でしょう」と思っていたところがあったんです。でも、宮さんの発言がきっかけになって、そこを真剣に考えるようになって。エコヲの考え方に、血肉を加えていくというか――外に対する憧れだけじゃなくて、きっと恐怖みたいなものもある。でもきっと「ここで終わりたくない」と思うだろうな、とか……。

――エコヲの人物像をどんどん深く掘り進めていくというか。

じん 参加していただいた方たちはみなさん大先輩ばかりだし、すぐにそれっぽい形にはできちゃうんです。ただ、僕自身「背伸びしよう」という感覚があった気もするんですけど、でもそれはちょっと違うのかな、と思ったんですよね。やっぱり、ちゃんと自分の血を流す――というと、ちょっとダサいかもしれないですけど、自分が責任を持てるものを作ろう、と。自分の好きなものを好き勝手に作るだけじゃなくて、今を生きてる若い子たちにも、ちゃんと響くようなものにしたい、そういう気持ちになったんですね。

Q4

――なるほど。『LISTENERS』では、エコヲとミュウのコンビが、さまざまなロックのジャンルを模した国を旅することになるわけですが、個人的に思い入れがあるジャンルというと何になりますか?

じん やっぱりプログレッシブ・ロックですね。しかもヒストリー的に面白いというよりは、音そのものだったり、そこに込められている思想が好きで。例えばピンク・フロイドは、アルバムを通して、大きなテーマ性や思想を世の中に訴えたバンドだったわけですけど、僕自身、『カゲロウプロジェクト』ではアルバム1枚を通してストーリーを表現しようと思っていて。そのとき、最初に思い浮かんでいたのは、プログレ周辺のアーティストだったんです。

――1曲楽しむだけじゃなくて、連作で世界観を描く、みたいな。

じん あとは、ザ・フーのピート・タウンゼントがやろうとしていたことだったり、ザ・ビートルズの『マジカル・ミステリー・ツアー』だったり……。ロックミュージシャンがオペラの脚本や小説を書いたり、ドラマを作ったりするのが、好きなんです。あとプログレッシブ・ロックは当時、先進的な要素を取り入れようと果敢にチャレンジしていたジャンルで、そこから生まれたメロディやコード進行からは、すごく影響を受けていますね。実際『LISTENERS』の中でも、プログレを扱ったエピソードの脚本を書いているんですけど、やっぱり一番思い入れが強いエピソードになってますね。

Q5

――今回、じんさんは音楽のプロデュースも担当されていますが、具体的にはどんな関わり方をされているんでしょうか?

じん 劇伴に関しては、音響監督の小泉(紀介)さんと一緒に、全体の方向性やテーマを決めました。例えば、ギターをたくさん使った劇伴にしたいとか、あとは音質面でも「ここはもっとこういう音色の方が合うんじゃないかな」とか。僕以外の方に作っていただいた曲に対して、いろいろとお願いしたりもしています。主題歌に関しては、作詞作曲もやって、より自分の作品に近い作り方ですね。ギターも演奏してますし(笑)。

――それはじんさん自身、主題歌を書きたかったということでしょうか?

じん いや、どうだろう(笑)。すごくやりたいと思っている一方で、この作品にふさわしい主題歌を作らなくちゃいけない、みたいな責任感、プレッシャーもあって。結局、他の人にお任せするよりは自分でやろうという結論になったのですが。……とはいえ、自分がひどい曲を書かない保証はないわけで(笑)、自分で勝手にハードルを上げていたところはありますね。

――あはは(笑)。

じん これは『LISTENERS』に限らず、自分がやりたいことを音楽で表現するのって、難しいと思うんです。「これってただのわがままなだけで、他人に聞かせる必要がないんじゃない?」って、そう思っちゃう性格なんです。一方で、「これだけ素晴らしいメンバーで作った作品なんだから、本気で作った主題歌でちゃんと彩りたい」「その”本気”には人にお金を払ってもらえる価値があるのかな」とか、そういうことを考えていた気がします。最終的には、すごくカッコいい曲になったと思うんですけど。……これがボコボコに叩かれたら、どうしよう? みたいな感じではあります(笑)。

Q6

――オープニング主題歌の聴きどころは、どこでしょうか?

じん 「ロック」ってすごく怒ってるイメージというか、不満だったり鬱屈していることを叫ぶ、そういうイメージがパッと思い浮かぶんですけど、じつは自分はこれまであまりそういう曲を作ったことがなかったんです。なので、今回はいわゆるパンクというか、中指を立てる感じを大事にしようというのはありました。ただ、それだけだと面白くないし、昔の曲を聴けばいいじゃないか、と思う。そこで、オープニング主題歌を作るにあたっては結構、モダンな感覚を入れたつもりです。メロディやコード進行は、僕が憧れていた音楽からの影響をそのまま出してるんですけど、サビの音色だったりアレンジは「うわ、音、派手っ!」みたいな感じです。

――あはは(笑)。

じん あと参加してくれたプレイヤーがみなさん、凄腕の方ばかりで。ギターがTHE BACK HORNの菅波(栄純)さんで、ベースがストレイテナーのひなっちさん(日向秀和)、ドラムがヒトリエのゆーまおさんなんですけど、もうバキバキです(笑)。僕自身、大先輩方の胸をお借りしてギターを弾いてるんですけど、「先輩にも決して負けてないぞ」みたいな(笑)。爆音で聞くと気持ちよくなれる曲になったんじゃないかなと思います。

あとボーカルのACCAMERさんは、単純に「面白い声だな」と思いました。面白い声ってすごく大事なことで、こういう声質の人がこの曲を歌うとこういう風になるんだ、と。いい意味で、聴いたことがない曲になったというか、曲を化けさせてくれたなと思います。純粋にいい歌であるのは間違いないんですけど、それに加えて、ちょっとミステリアスなところがある。もう1回聴きたくなる、そんな魅力がある声だと思いますね。

Q7

――一方、12曲あるエンディング曲がすべて、じんさんの書き下ろしというのも、大きなポイントですよね。

じん いやもう、死んじゃうかも? っていうくらいの物量でした(笑)。今回、zukioさんという――僕が音楽活動を始めて、すぐの頃に出会った方で、自分にとっては旧知の方なんですけど、今回「ちょっと一緒にやりませんか」と声をかけて。それで協力してもらったくらいで、作詞作曲はもちろん編曲も半分くらい自分でやりました。そういう意味でも、自分のカロリーが高い連作になってますね。『LISTENERS』のプロジェクトの中でも、自分の世界観でひたすら突っ走っているのが、このエンディングの連作かな。

チームで作っていった本編とは違って、「これで本当に合ってるのか、合ってないのか」って自問自答して、「間違いない」と思えたことをやる。そういう孤独な苦労みたいなものは、ちょっとありますね。それこそ第2話のエンディングの歌詞を書いてるときの孤独感がすごくて、それは曲にも反映してるなって思います。

――ある意味、じんさんのソロに近い感触があるというか。

じん そうですね、非常にアーティスティックになってるかなと思います。それこそ「アニソンにしよう」みたいなことは、まったく考えなかったです(笑)。そういう計算をしている余裕がまったくなくて。なので自分が単純に「いい」と思ったものを作る、そういう純度は高い気がします。普通のアニメの企画だったら「古いからダメ」って、突っぱねられそうな曲をガンガン入れたって感じですかね(笑)。

――その一方で、これまでのじんさんの曲とも少し違う気がします。

じん それはやっぱり『LISTENERS』だからでしょうね。ストーリーはもちろん、シナリオを作ってる気持ち、思想みたいなものが大きいのかもしれません。単純にアニメを観て感じたことを曲にするというわけじゃなくて、そのエピソードのシナリオを書いていたときに、自分たちが期待していたこと、考えていたことを踏まえて、曲を書く。だからこそ、絶対に外れないだろうというか、それこそ「このエピソードが終わったあとにはこれが流れてほしい。」、そう思える曲になってるかなと思います。

Q8

――ネタバレにならない範囲で、個人的に「ここを見てほしい」というポイントを教えてください。

じん まずは、第6話。そこまではどちらかというと、エコヲに焦点が当たることが多いんですけど、この第6話はミュウにフォーカスが当たるエピソードです。シリーズが後半に入るにあたって、「ミュウっていったいどんな存在なんだろう?」とすごく考えた結果、できたエピソードです。

あとは第10話。第10話は、「こんなことをやって本当にいいの?」っていうくらい、贅沢なエピソードになっています。今の世の中、映像作品を作る大変さみたいなものって、あると思うんです。予算もかかるし、これだけたくさんある作品の中で、抜きん出る必要もある。みんなたぶん、肩肘張って作ってると思うんですけど、そんな中でこの第10話みたいなものが実現できたっていうのは、すごいなって思います。それこそ子供の頃に初めてアニメーションを見たときの感じというか、『菊次郎の夏』を見たときの感覚というか……。個人的な大好きなエピソードになっているので、ぜひ観てほしいです。

Q9

――では最後に、放映開始を楽しみにしている方に向けてメッセージをお願いします。

じん やっぱり、すごくいいチームで作れたっていうのが、一番大きいですね。作っている人のいいところも悪いところも含めて、作品の味になってるんじゃないかな、と思います。それこそ、スタンディング・オン・ザ・ショルダー・オブ・ジャイアンツというか(笑)、企画を立ち上げたときの感覚を、いい形で作品に昇華してもらえて、すごくいい景色を見せてもらえたな、と思っています。この作品を観て、愛してもらえると、ありがたいです。

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